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上杉柊平さん(小沼豊役)

 最初に監督さんとお話したとき、小沼は人を見下しているよね、とおっしゃったんです。僕も台本を読んで、同じことを思いました。それも小沼の言動でなく、彼がいないシーンで、小沼に翻ろうされた人たちのやりとりを読んでです。

 実際、武藤さんと対峙するところでは、自分でも思いもしない表情が浮かびました。ニュース番組を見ていると、犯罪者が連行される場面が映ることがありますよね。そのときの犯人の表情を見るたび、僕は怖さを感じていましたが、なぜか小沼も自然とテレビで見ていた犯罪者と同じような表情になったんです。きっと小沼は捕まることへの危機感がある一方で、『コイツに俺のことが分かるはずがない』という変な優越感を持っている気がして。そんな感情がああいう表情に繋がるんだ、と演じながら感じました。

 悪役もとてもやり甲斐があります。悪い感情の中から自分が理解できるところを探して、膨らませる作業が好きなんです。僕は俳優としてまだまだ経験が浅く、視聴者の方に気に留めてもらえることが大事だと思っているので、小沼のような強烈な役を演じられてありがたかったです。

 小沼の登場する場面はそう多くありません。でも、監督さんといろいろ相談できましたし、玉山さんと緊張感のある場面を演じることもできました。玉山さんは撮影のたびにしなくてはいけないことがたくさんあるのに、僕のことを気遣ってくださったんです。アクションシーンでご自身も大変な中、『頭気をつけて』とさりげなくかばってくださり、思わずキュンとしてしまいました(笑)。

 玉山さんとはいろいろお話させていただき、それもうれしかったです。いつかは玉山さんのように存在感や演技力を培い、活躍できるようになりたいですね。

 第5話から、小沼の正体がどんどんはっきりしていきます。小沼に対して『こんな奴は許せない、人道的じゃないよね』という意見もあると思います。確かに小沼のしたことは許されませんが、彼のやっていることに需要があったのも事実。この作品はフィクションですが小沼の存在や、犯罪の内容に妙にリアリティを感じたので僕は『犯罪症候群』という作品に引き込まれたんです。何より玉山さん必死にドラマに説得力を持たせるべく追求されていました。その姿勢が勉強になりましたし、ぜひ臨場感を楽しんでほしいです。

 この作品の『復讐の是非』というテーマは非常に重たいものですが、小さな復讐心を持つのは決して悪いことではないと思います。復讐って噛み砕くと、悔しさだと思うんです。『あいつにオーディションであの役取られた。じゃあ次は俺が』。そんな気持ちも広く捉えれば“復讐”のはずです。復讐心だって自分を高めてくれるものになります。ただ、そう思えるライバルがいての話かもしれませんね。