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ミムラさん(磯村咲子役)

 私の周りにいる年上の友人たち、40代・50代だと介護って他人事じゃないんですよね。お母さんが病気で介護をしている、というような話も耳に届いていたので、そういう意味でも咲子の、介護で苦しむ気持ちにリアルなものを感じました。書店に行って介護関連の本を見たところ、介護している側が体調を崩すケースも多く、一番重要なのは介護人が心身ともに元気でいること、と書いてあったんです。とは言え、親の介護ってどうしたって身内だけで抱えがちですよね。咲子を通し、考えることがたくさんありました。

 これだけSNSが発達すると、咲子のように自分の気づかぬところで事件に巻き込まれ、最悪の場合、加害者の側に立っていることだって大いにあると思います。自分が知っているのか知っていないのかに関わらず、罪という意味では一緒。そのあたりは、今の時代ならではのストーリーだと感じました。

 作品全体が復讐の是非と、被害者遺族の気持ちを丁寧に描き、その硬派な質感を大事にしていると感じましたし、その中で、予想もしなかった事態に巻き込まれ恐怖を味わう咲子を、なるべく“どこにでもいる人”として演じました。

 その上で、咲子は母親の介護をすごく頑張っていて、その気持ちを吐き出すようにSNSに投稿していましたが、彼女の言葉は心からのもので嘘ではないですよね。仮に、SNS上に『次の講義出たくないからもう死んじゃいたい』との言葉が発信されていたとして、この発信主の“死”と咲子の“死”はワードとしては同じなんですよ。それなのに、ジーニアスのように人の心理を読むのに長けている人物に目をつけられると、絶望の感情を読み取られてしまう。思いもよらない深い部分を嗅ぎつけられる怖さも感じました。

 咲子を演じて考えさせられたのは、事件に加担するきっかけになったのも、事件を知り、自分なりに解決しようとして頼るのもSNS、インターネットだったんです。今回はネットのいいところも悪いところも描いていますし、自分の情報を必要以上に出すことにリスクがあることを理解しておかなければいけないですよね。

 ニュースを見ていると、事件が起きた際、加害者に関しては様々なことが伝えられますが、事件に遭った側、遺族の方の心情ってなかなか伝わってこないし、おざなりになっている部分もあると思います。ニュースの報道は、一週間もすれば世間の人々は忘れてしまうでしょう。でも被害者側の人々の人生はその先もずっと続くわけで、そういうことで苦しんでいる皆さんを救う制度の充実を願っています。加害者を憎んでいる人の背中をポンポンと叩き、『大変でしたね』と言うだけで救われることもあるかもしれません。

 『犯罪症候群』のように重いテーマを投げかけている作品に参加すると、リアリティのある実体験のように見応えのあるものにしたいという気持ちがまずあります。それと同時に、見てくださる方にも『もし自分の身に起きたら…』と考えていただくきっかけになってくれたら、と願っています。