インタビュー

重苦しい展開の中、雅恵の夫や娘をまっすぐに思い遣る気持ちが、ドラマの中の“救い”になっている気がします。
 雅恵はこの作品で唯一、心が“健康”な人だと思います。途中まで娘が非行に走ってしまい大変でしたが、それでも決して彼女自身まいることもなかったですし、何があっても病まないというか、蝕まれない人だということを感じました。
雅恵を演じる上で、大切にしたことは?
 武藤さんにとって、家の中だけが唯一安らげる場所だと思ったんです。それで、雅恵は唯一信じられる人で。とは言え、武藤さんとのシーンでは娘の真梨子のことで深刻に話す場面も多く、なかなか平穏な空気にはなりませんでしたけど(笑)。ただ、気持ちとしては雅恵との場面が、武藤さんにとってほっとできるものになればいいな、と。私自身、仕事が大変な上、娘のことでも悩まなくてはいけない武藤さんのことを素直に、『こんな状況だったら、可哀想だな』と思いました。

雅恵を見ていると、真梨子がどんなに反抗しても心の底では信じているように見えました。その強さはどこから来るものなのでしょうか?
 夫を信じているのと、同じ気持ちなんだと思います。根底に娘への揺るぎない愛情もありますし。これまで確かな愛情を持って育ててきたので、『何があっても大丈夫』と雅恵は思っているのではないでしょうか。
ドラマの中では描かれていませんが、武藤はなぜ雅恵に惹かれたと思いますか? ご自身でふたりの馴れ初めを考えたことはありますか?
 馴れ初めですか?それは考えたこと、ありませんでしたね(笑)。雅恵は姉さん女房ですし、武藤さんは彼女の包容力、大きく包みこむような愛情に惹かれた気がします。玉山(鉄二)さんとはこれまでにも共演したことがありますが、夫婦役というのは、驚きでした。実際、かなり姉さん女房なので、申し訳ないな、と(笑)。

武藤は常にたくさんのことで苦悩を抱えています。雅恵は夫の苦しみを分かっているのでしょうか?
 演じている身としては、分かってあげていると思いたいですけど…。雅恵は感じてはいるでしょうね。でも、悩みって本人にしか分からない部分もありますから。武藤さんが他の人には見せない苦しい部分を一番近くで見ているのが雅恵であり、彼女のような立場だったら余計なことを言わず、見守ることしかできないのかもしれません。
とはいえ、武藤は雅恵がいなかったら、破滅するしかなかったのでは?
 この間、玉山さんも『武藤は何のために生きているんだろう』とつぶやいていらっしゃったんです。彼が生きる理由は家族がいるからであり、武藤さんがギリギリのところで気持ちを引き止められているのは、雅恵や真梨子の存在が大きいかもしれないですね。

「犯罪症候群」作品そのものに対する感想は?
 複雑にいろいろなことが入り乱れ、何重にも重なって構成されている作品ではないでしょうか。『あ、答えが見えたかも』と思うんですけど、その先にまた違う景色が見えてきて。『一体どこに連れて行かれるのだろう?』というおもしろさがあると思います。話は簡単ではないですけど、素直にハラハラドキドキしながら見ることができますし、サスペンスならではの解読するおもしろさもあります。武藤さんがどこにたどり着くのか、最後まで楽しんでご覧ください。
本作のテーマ、『復讐の是非』について、鶴田さんのお考えは?
 思うことは仕方がないと思います。でもそれを、行動に移すことはやはりしてはいけないと思うんです。なぜなら、被害に遭って自分も傷ついているわけですから。同じことをしても…。ただ、最初に言った通り、気持ちとして持つことは仕方がないので、それをいかに消化していくのか、なんだと思います。武藤さんもそういう考えで行動しているように見えますし、基本的には多くの人がそう思っているでしょう。復讐したいという感情がどうすれば薄れるのかは、私も正直、まだ分かりません。時間なのか、それとも何か違うものが必要なのか…。この作品では、武藤さんの葛藤を通して、そういう部分も丁寧に描かれていくと思います。

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