インタビュー

本作への出演オファーが来たときの印象は?
 原作が、ある事件が起きて、そのトリックを暴き、犯人を懲らしめるというものでなく、僕が演じる武藤自身にトラウマがあり、罪を背負い生きていて、葛藤しながら一つひとつの事件に立ち向かっていく話だったので惹かれました。武藤の苦悩を自分なりに試行錯誤しながら表現したいとも思いました。
武藤をどんな人物と捉えていますか?
 自分がしていることが正義だと信じて一生懸命に動くけれど、その正義感ゆえ、人を救えないこともあります。そういうことって、実際あると思います。良かれと思っての行動で誰かを傷つけたりすることって。武藤の生き様はもしかしたら、後味が良くないかもしれません。でも、武藤に起きる出来事を視聴者の皆さんが自分自身の生活に置き換えていただけると、いろいろ見えてくるのではないでしょうか。
武藤の妹が亡くなった衝撃の事件を始め、ドラマは深刻な物語が展開します。そして、たくさんの問題提起をしていると思います。
 物事が表面上は悪に見える場合もあれば、正義に見える場合もあります。このドラマでは、いろんな出来事をさまざまな角度から見ていくので、自分が当事者になったとき、その見方でいいのか? というのがまずあります。武藤にしても、彼の行動が本当に正しいのか、間違っていないのか。『果たしてその想いを貫き通していいのだろうか?』ということを考えさせられる気がします。

玉山さんは「復讐の是非」というドラマのテーマをどう思いますか?
 社会的には『復讐は良くない』とか『復讐は卑屈だ』とか言います。でも、その気持ちを黙っていることが本当に正しいのか、考える必要があると思います。実際、被害者の方が救われないことも多いし、僕だって家族に何かあったら、復讐したいと思うかもしれません。
冒頭の武藤は、復讐はいけないことだと歯を食いしばり耐えています。
 武藤は確かに復讐などすまい、と思い自分を律しています。でも彼なりの正義で突き進んでいるところが見ようによっては復讐めいている気がして。目つきひとつからもにじみ出るものがあるはずなので、復讐はダメだと言いながらもどこか行動が反比例しているところは、人間なら誰でもそういうところがあるのかもしれませんね。
武藤は特殊任務を命じる環(渡部篤郎さん)から、「あなたは獣だ」と言われます。武藤の“獣”の部分をどう演じていますか?
 武藤の中の獣とはすなわち、彼の正義感じゃないか、と。“正義感”って熱いものや、正しいものとの印象がありますが、あまりに思いが強過ぎたら、暴走する可能性もある気がして。そうなってしまった人を他人は“面倒くさい奴”とか“かえって危ない人”とか思うのではないでしょうか。正義感も行き過ぎれば狂気に変わる危険性はいくらでもあるから、要はバランスですよね。武藤は不器用だし、その危うさが彼の獣の部分なのかな、と。

演じていて、考えることも多い役ですか?
 多いです。表面的じゃない演技、見ている方に幾通りの捉え方ができる表現をしたいので。またそれは僕らキャストの演技だけでなく、演出だったり、劇中で流れる音楽だったり。いろいろなところにこだわっているので、視聴者の皆さんにも期待していただきたいです。
武藤は家庭でも問題を抱えています。
 武藤の家の問題をしっかり描くことで、作品により奥行が出ると思います。武藤には自分の中の獣の部分を娘にだけは見せたくない、という思いがあって、そのことを娘に伝えればいいのでしょうが、説明しきれない気持ちってありますよね。武藤のジレンマや、刑事だった父を尊敬していたからこそ、今の武藤に裏切られたような娘の気持ち、さらに夫や娘を愛し、何とか支えようとする妻…。すごく切ないし、武藤家の人々の葛藤にも説得力があります。
中学生の子供がいる役はいかがですか?
 それくらい大きな子供がいる人たちにリサーチしたところ、皆が『子供が口を聞いてくれない』と(笑)。そこもリアルに演じたいですね。
ところで地上波では、大人気作となった朝ドラ「マッサン」以来の主演になります。
 多くの視聴者の皆さんが『マッサン』のときの印象を持っているかもしれませんが、あれだけの作品に出合え、沢山の支持をしていただけたことは本当に幸せだと思っています。『マッサン』のイメージのままで武藤を見たら、ものすごいギャップを感じるかしれません。でもそれが良い意味での違和感になるでしょうし、この作品にとってはそれも “武器”になってくれたらいいな、と思っています。

今回は、鏑木役の谷原章介さんや渡部さんとの共演も楽しみです。
 土曜の夜11時台の放送だけにエッジの利いた作品を作ることが可能で、お二人が出演されることで、ドラマに一層重厚感が出て、説得力が増すと思いました。3人の中で僕が一番年下なので、お二人から多くのことを学び、ときにはその背中に乗り(笑)、見ごたえのある作品を作っていきたいですね。
ドラマのみどころを教えてください。
 武藤は殺人事件で妹を失った過去があり、そのとき抱いた復讐心ゆえ、人生が大きく変わってしまいました。家族にもいろいろと迷惑をかけながら、刑事とは違う形で“小口誘拐”という特殊な事件を追いますが、劇中で何度も武藤の過去が挿入されます。武藤の過去を見つつ、復讐は許されるのか、やはりしてはいけないのか。この作品の大きなテーマを最初から提示していますので、皆さんもぜひ一緒に考えていただきたいです。

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